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今日のふるごと -59-

天皇無道(あじけなく)にして盗賊國に満ち、日(にちにち)刑(しおきする)も絶えず。大王、嘆絶して奏して曰く。先皇は罰を神に誓いて人を刑すること有り。また思うに夫れ天皇の恥るところ、先皇の痛む所、刑を行うよりも大なるは莫矣(なし)。國に盗(ぬすびと)有るは是れ王者の賊なればなり。王者不義にして官利を先にし、以て道を先にせざる則は民、云何で飢えざる。王者不仁にして苛政を為し以て飢えを救わざる則は民、云何でか盗まざる。王者不智にして専ら刑を行う。以て理の行われざる則は民、云何でか乱れざらむ。王者不礼にして甚だしく謾き為して以て、律為さざる則は民、云何でか叛かざる。
危うき哉、天皇の刑を好まること也、小臣 天に告(もうし)まつらむ。是れ、何の責(とがめたてたまうことなる)ぞや。面(まのあたり)に、危うきを見むとは、と。
天皇、大いに怖れ千田を以て大王に賜うも、大王 辞して曰く。小臣、不肖と雖も五岳の金も何ぞ喜びとすること有らむ。庶幾(こいねがわく)ば天皇、唯 其の危うきに治(そなえまつられん)ことを、と。この且、刑を休(やめ)たまえり。

「御語本紀 上の下巻」より

崇峻天皇に大王(聖徳太子)が諫めた言葉。國中に盗賊が溢れ、刑罰に処するばかりの天皇に対して、王の仁政と礼、規律のあり方を説かれた。
わが国の先皇は神に誓うことなく人を罰することはなかった。刑はこの上なく慎重に行うべきことであり、民を罰するとは天皇の恥であり自らの痛みとされることであったのだ。王が謹みなく官が私に利することを優先して、どうして盗賊がいなくなるだろうか、叛く者がいなくなるだろうか、飢えるものがいなくなるだろうか、と。刑を以て国を治めようとするとはなんと危ういことか、その責めを受けることになるだろうという言葉に、天皇は怖れ、太子に千田を賜うとしたが太子は固辞した。それからしばらくの間は刑を行わなかった。

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