旧事本紀研究会
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今日のふるごと -5-

物部雄君連(もののべのたけのきみのむらじ)、陸奥国に任じ心にかかることあり。大王問うて曰く。汝、何をか思(おもんばか)る。
雄君連、もうして曰く。臣は国司に任(よざ)さる国を治むるの法を如何せんや。国を治むる法は忠恕のみ、忠恕は孝悌を先にす。また、孝悌は如何。
大王、おしえ曰わく。好んで夷賊と結ばず。命に非ずむば熊猪を狩りせず。私(ひそ)かに乱宴を為さず。妾愛、色に依らず。能く先功を尋ねて、能く先辱を雪(そそ)ぐは孝と道うべきのみ。兄を誘いて父に事え、兄を閣いて朋友と結ばず。兄と共に友と結び信を失わず。総てに軽く向わず、老長と諍わず、朝には以て兄を先とし、禄には以て兄を先にするは悌と道うべし、と。
また、前(すす)んで申して曰く。忠恕とは如何。
おしえ曰わく。己の威を立てず、王民を使わず、賄賂を受けず、訴訟を枉げず、好きな党(ともがら)と偏らず。自らを克(よし)と為さずむば恕と道うべきのみ。
さらに、明徳を晦(くらま)さず。善極を退かず道を化(みちび)くに倦まず、道心を放れず、命貧を憂えず、命死を悔いずば忠と道うべし、と。

申して曰く。臣は以て小人なり。道は以て大事なり。其の得ることはいかかがせむ。
おしえ曰わく。天の大なる物も為是。方寸の小極に在り。其の得ると得ざるとは欲(ほしみ)と欲せざるに在ることのみ。 

「御語本紀」より

物部雄君連が陸奥国の國司を任じられるにあたり思案し、それに対して聖徳太子がおしえたことが書かれている。
(雄君連とは物部尾興の子である守屋大連の長子。崇峻天皇の皇位継承の競争相手であった穴穂部皇子を天皇に擁立しようと謀ったとして物部家が滅ぼされた際に、聖徳太子が救った。「前の代がその時の朝廷に逆ったからといって先皇の御代から仕えてきたその先祖の忠誠心まで忘れることは誤りです。そのことのみではなく昔、神武天皇と熟美真味命の誓約もあり、もしこのことに対して天皇の私情を以て皇祖の詔を反故になされば、必ずや将来に於いて、公の義に忠誠なる者は考えさせられることになりましょう」と諫言され、雄君は生かされた。)
国を治める心得の原則は忠恕であるが、忠恕を尽くすにはまずは孝悌があるとして雄君連は孝悌について問うた。父母に孝養を尽くし兄弟の信頼を強く結ぶことだが、言うは易し行い難しである。
太子曰く、地方において、土地の者を私情で采配したり賄賂や遊び、色欲に溺れるなどしてはならない。そして先輩の功績をよく知り手本にして学び、また失敗についても過ちを繰り返さないように学ぶことが孝である。弟は兄につき随って父につかえ、また友と結ぶときも兄を抜きに親しくするなどせず共に信頼を築くようにせよ。すべてを軽薄に扱わず丁寧に、年上の人の意見に耳を傾け礼儀正しくし、何ごとも兄を立て先とし共に和していくことが悌である、と教えた。これは先代が累代の功績を水泡に帰したことに鑑みての、物部家を再興するために必要な教えでもあった。

次に忠恕とはどういうことかと尋ねた。
忠恕はその真心と惻隠の情をいうが、地方外官として赴任する雄君にとっては心すべきことであった。そこで太子は、「役人としての威厳は天皇という公があってのこと、その公私について厳しく自覚すること、公民を私に使用しないこと、収賄などに手を汚して自らを辱めないこと、感情によって訴訟を枉げるようなことの無いように、また徒党を組んで公正を乱すようなことをしないこと、克く自覚して恥じることがなければ「恕」(ただしい)仁者たりえむ」と戒められた。
「明徳を晦まさず」は天神の御心そのままの吾が身の内なる神にしたがい自分の心を曇らせないようにすることである。
「善極を退かず、道をみちびくことを倦まず」は、善とは皇天の道であることを忘れず、その道を実践し広めていくことを怠けず飽きずに行うことである。
「道心を放れず、命貧を憂えず、命死を悔いず」は、允(まこと)を以て中を執る、あるいは人心これ危、道心これ微という儒教からの教えで、儚く命を落とすようなことがあっても命は天の理にそって在るものだということだから憂慮せず、天道にそって自分のはたらきを十分に発揮できるように悔いなきように努めよと教えられた。
さらに、雄君の自分は小人であるから何ができるだろうかという問いに対して、おおいなる天の明徳は、人たとえ小さきといえどもその心は天に等しい、その違いは欲があるかないか、それを捨てられるかどうかなのだと応えられた。胸中一寸の心もまた天の心の一片であり、何も欲しくないという心が大人物たる資格であることを知れと教えられた。

※この章は「宗徳経」に説かれた五徳、天道など皇天の道、そして「古代憲法」にある政家憲法を参考にされたい。

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